#TECCI

2015年10月27日号 Vol.8

Louis Vuitton と LVMHグループ(前編)

2015年10月28日 00:01 by monthly_tecci
2015年10月28日 00:01 by monthly_tecci

誰もが知っている高級ブランド、Louis Vuitton。小室さんは2015年1月パリで行われたメンズコレクションにも出向かれ、今年上半期は50アイテム以上着用されていました。
Louis Vuittonが世界的ブランドへ成長を遂げた背景には、どのような歴史があったのでしょうか。昔から日本とも大きな関わりがあるブランドと言われていますね。
現在はLVMH(エルヴイエムエイチ、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)としてLouis Vuittonだけではなく多数のブランドを抱える大手企業体として君臨しています。

今月と来月に渡り、TECCI的目線でLouis Vuittonにクローズアップします。


【ファッションブランド「Louis Vuitton」の起源】

創業者であるルイ・ヴィトンは、1821年フランス・ジュラ山脈地方のアンシェ村生まれ。14歳の時に家出し、徒歩でパリに辿り着いたルイは、荷物を入れるトランクを作り荷造りまで行う仕事(荷造り用木箱製造兼荷造り職人)の見習いとなります。修業を積んだルイは1854年に独立し、パリに世界初の旅行鞄専門店を開業。上流階級の間で流行した旅行ブームに乗じ、店は発展を遂げます。

当時の旅行手段は馬車が主流。多くの荷物入れたトランクを馬車に積み運ぶ大がかりなもので、降雨時にトランクから水が落ちやすいよう蓋に丸みがある形の、外装に豚革が張られた重いものが一般的なトランクでした。
しかし1858年、ルイは画期的なトランクを発売します。ポプラ材で軽量化を実現し、トランクを補強する箍(たが)を備え、蓋の表面を平らにした新しい細長い形は、輸送技術が馬車から船や機関車に発展する時代に、トランクを積み重ねて安定的に固定することができる実用的なものに進化を遂げたのです。そして外装には、豚革に代わり軽いコットン素材に防水加工を施したモダンで明るいグレーのキャンバス地「グリ・トリアノン」を開発。この新しい平型トランクは一躍評判となり、需要が拡大。1867年パリ万博で銅メダルを授与され、世界的な評判を獲得しました。


【模倣品との戦いから生まれたシンボリック・デザイン】

しかし大ヒットすればするほど、模倣品が多く出回るようになります。それに対抗するため、1872年にベージュと赤のストライプ模様をプリントしたキャンバス地「レイエ・キャンバス」を開発。更に1976年「レイエ・キャンバス」の色をベージュとブラウン濃淡のストライプ模様を交互に配したものに変更しますが、模倣品は後を絶ちません。

1888年ルイと息子の二代目ジョルジュは、ベージュとブラウンの市松模様を交互に並べ、モチーフ上に「marque L.Vuitton deposee(商標登録:ルイ・ヴィトン)」の文字を配した新しい「ダミエ・キャンバス」を生み出しました。これは、Louis Vuitton史上初、地模様としては世界初の商標登録でした。

しかし模倣品を根絶することはできず、1982年にルイが亡くなると、偽造の横行に対して根本的に策を講じなければならなくなります。Louis Vuittonのキャンバス地開発の歴史は、偽造との戦いの歴史でもありました。

1896年ジョルジュは、日本の家紋からインスピレーションされたとも言われる、花と星のモチーフと創業者ルイ・ヴィトンの頭文字である「L」と「V」を組み合わせた複雑な図柄を配した「モノグラム・キャンバス」を考案。商標登録もされたこのモチーフは、時代を超えてなお世界中で愛されるブランドのシンボルとなったのです。

なお、モノグラム誕生とともに姿を消したダミエでしたが、1996年モノグラム誕生100周年を記念して復刻され人気を博し、1998年からは定番ラインに。その市松模様もLouis Vuittonの象徴的なモチーフのひとつとなりました。


小室さん所有のモノグラム・マルチカラーのトランク2つ、そしてモノグラムのボストンバッグ、キーポル。



【ブランドのモード化戦略】

プレタポルテ(高級既製服)への参入を画策していたLouis Vuittonは、1997年、ブランドの初代アーティスティック・ディレクターにニューヨーク出身の新進気鋭のデザイナー、マーク・ジェイコブス(当時34歳)を抜擢。1998/99年秋冬シーズンのパリコレ・レディースラインより、それまで"服を運ぶ入れ物"を作ってきた同社にとって、新たに"服作り"の歴史が始まったのです。

 


現在のLouis Vuittonメンズコレクションのディレクター、キム・ジョーンズと肩を組み、キムのコレクションをまとうマーク・ジェイコブス。2014年LV春夏コレクションにて。


伝統あるフランスの老舗ブランドを統括する立場にアメリカ人の若手デザイナーを据えるという、ある意味挑戦的とも言えるこの大胆な起用に、ジェイコブスはその類まれなる才能と鋭い感性を存分に発揮して応えます。
旅行鞄専門店として伝統を紡いできた常識や固定観念を打ち破りながらも、その伝統を単に壊すのではなく、そこに都会的でモダンなエッセンスを散りばめ、斬新で若々しい感性を取り入れた革新的な作品を生み出すことで、Louis Vuittonのブランドイメージが一気に洗練されたと言えるでしょう。
最初のコレクションにあわせて発売された「モノグラム・ヴェルニ」は、エナメルコーティングしたカーフスキン(仔牛の革)にモノグラムのエンボス加工(型押し)を施した艶やかな光沢感が特徴のバッグで、鮮やかな色彩のカラーバリエーションを展開し、従来のこげ茶色のモノグラムのイメージを一新。マーク・ジェイコブスの名を世界に知らしめました。

ジェイコブスが創り出す服をまとったモデルがシーズン毎の新作バッグを携えランウェイを歩く、Louis Vuittonならではの服とバッグのラグジュアリーなコラボレーションとも言えるコレクションが確立し、老舗高級鞄ブランドから一流のモード系ファッションブランドへと変貌を遂げたのです。

また、ジェイコブスは特に現代芸術のアーティストとのコラボレーションで創作の世界を広げ、新しい作品を発表しました。みなさんもどこかで目にしたことがあるものが多いのではないでしょうか。
80年代のカウンター・カルチャーを代表するアメリカのアーティスト、スティーブン・スプラウスによるモノグラム・グラフィティ(2001年)は、モノグラムにラフなロゴ・ペインティングされた絵柄が評判となり、今ではコレクターズアイテムとなっているそうです。

お馴染みのモノグラム・マルチカラーは世界的にも有名な日本人現代美術家、村上隆とのコラボレーションによって生み出されました。白・黒の生地に33色もの色を使用した華やかでとてもかわいらしいモノグラムです。村上氏はLouis Vuittonのアニメーションも制作しています。


また、2012年には前衛芸術家、草間彌生とのコレクションを発表。独自の世界観をそのまま再現したウィンドウ・ディスプレイも大きな話題となりました。


このように16年に渡りLouis Vuittonで革新的な働きをしてきたジェイコブスでしたが、自身のブランドや関連事業に専念するため、2014年春夏コレクションを最後にアーティスティック・ディレクターの職を退任。
メリーゴーランド,噴水,エスカレーター,エレベーターなど、過去のショーを彩ったメモリアルな舞台セットを漆黒で配置した豪華な会場で、16年間の集大成にふさわしい壮大なフィナーレを飾り、惜しまれつつLouis Vuittonを去りました。


後任にはバレンシアガの元デザイナー、ニコラ・ゲスキエールが就任。2014/15年秋冬コレクションからLouis Vuittonの新たな歴史が始まっています。



次号につづく・・・

11月号では、Louis Vuittonがファミリー企業からどのようにグローバルに成長を遂げていったのか、また、小室さんも着用されているメンズラインについてお送りする予定です。お楽しみに。

続いて・・・

Twitter #てっち衣装部 アーカイブス 「小室さんとLOUIS VUITTON」1~50を大公開!
今月号では1~25を振り返ります(^ ^)/□ 



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