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2015年05月27日号 Vol.4

特別付録:小室哲哉 featuring 坂本美雨 in 八千代座 Live Report 2015/05/21

2015年05月27日 06:53 by monthly_tecci
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2015/5/21 小室哲哉 featuring 坂本美雨 in 八千代座 Live Report
 
小室哲哉 featuring 坂本美雨 in 八千代座」公演は 5月21日、熊本県山鹿市にある八千代座で行われました。八千代座は、明治 43 年竣工の江戸時代の伝統的な様式を今に伝える芝居小屋です。山鹿の商工会が劇場組合を作り、1 株 30 円の株を募って建設。しかし昭和 40 年代老朽化が進んだため老人会が募金を募り屋根瓦を修復。この運動に刺激を受けた若者も、復興へ向けての様々な活動を始めました。その後昭和 63 年国重要文化財に指定され、現在では歌舞伎、舞台、コンサートなど様々な催しが行われています。
八千代座ホームページ 
 

 
 
このような長い歴史と風情がある建物のステージにシンセサイザー(ソフトシンセ)というミスマッチな光景は、今までの小室哲哉さんの活動でどのくらい目にしたことがあるでしょうか。シンセブースに置かれた PC のデスクトップテーマは新しい"TK"ロゴになっており、ソロ活動がますます活発になることを予感させます。

坂本美雨さんは以前より小室哲哉さんファンを公言しており、ラジオのゲスト出演、小室さんのソロ曲『永遠と名づけてデイドリーム』のカバー、楽曲提供などで交流を深めてきました。このコラボレーションは 2014 年の美雨さんのラジオイベントでの共演をきっかけに、"小室哲哉 featuring 坂本美雨"として Billboard Live 東京・大阪で公演を重ね、そして今回の熊本公演が実現しました。

コンサートはオルガンの音色が美しい TMN『TIME TO COUNTDOWN』のインストから始まり、3 曲目の globe の名曲『Can't Stop Fallin'in Love』と共にボーカルの坂本美雨さんがステージに登場。誰もが知っている名曲に美雨さんの美しい歌声が乗ることで、曲がアップデートされていくような感覚を覚えました。
 
曲ごとに MC で美雨さんの小室さんの楽曲への想いやエピソードを聞くことができるのがこのコンサートの醍醐味のひとつ。世界的に有名な音楽家を両親にもつ、彼女の早熟な音楽体験の一つは小室さんの曲であり、その思い出を懐かしそうに愛おしそうに語る姿と丁寧に歌う姿、そしてそんな彼女を見守るように、送り出すように、優しくピアノを奏でる小室さん。このコラボレーションの素晴らしさはここにあります。これは坂本美雨さんとだからこそ表現できるのでしょう。

美雨さんは現在妊娠 8 ヶ月とのことで、この公演を"坂本美雨+α"とネーミング。「妊婦さんとセッションするのは初めて」と小室さん。"+α"のパワーも加わってか、美雨さんの歌がより力強く響くような気がしました。そしてこれが 3 回目のコンサートだとは思えない、まるで何度もセッションを重ねているかのようなリラックスした雰囲気を保ちながら、ギターの松尾和博さんも含め、時折絶妙なアイコンタクトを交えつつ演奏が続きます。
 
二人とも八千代座の雰囲気が気に入ったようで、「(天井に描かれているかつての山鹿の企業イラストを見て)一枚貼って帰りたい」と小室さん。貼るとしたら一体何を貼られるのでしょうね。

6 曲目の華原朋美さんの『LOVE BRACE』は人生の深い愛をテーマにしたようにも思える名曲で、あらためて美雨さんの表現力や小室さんの普遍的な歌詞使いに心を打たれます。
 
そして美雨さんが「14 歳で出会い、部屋で繰り返し聴いては母(矢野顕子さん)に心配された」という思い入れの深い曲『永遠と名づけてデイドリーム』。この曲は当時 20 代前半の坂元裕二さんが作詞しており、最近小室さんが坂元さんと会った際に「ずるいですよ、小室さん、作詞できるじゃないですか」と言われたというエピソードも披露。90 年代の小室さんの歌詞は、坂元さんも勉強になったと言われていたそうです。
 
9 曲目は今回の熊本公演限定の曲、TM NETWORK の名曲『humansystem』。会場からは歓声が上がりました。ジャジーなピアノと美雨さんの歌詞を噛み締めながら歌う姿は、TMNETWORK のカバーを越えて"坂本美雨の humansystem"となり、人と人の繋がりや縁や時間が、時空を飛び越え、今にシンクロしているような気持ちにさせてくれました。

最後の曲は「KEIKO さんの歌声を待ちわびて、大切に歌う」今年 20 周年を迎える globe の『Precious Memories』。アンコールに渡辺美里さんの『My Revolution』でコンサートは幕を閉じ、美雨さんは名残惜しそうにステージを後にしました。
 
1990 年代を中心に沢山のヒット曲や名曲を生み出した小室哲哉さん。再リリースや REMIX(RETRACKS)で再び耳にする機会も多くなりましたが、若い世代へこれらの楽曲を繋いでゆく大切なことの一つに、歌い継ぐ大切さもこの公演で再認識させられた気がします。坂本九の『上を向いて歩こう』が今もなお世界中のシンガーによって歌い継がれているように、国内外の表現者たちによって小室さんの楽曲がさまざまな場所や世代の元に届けられたら素晴らしいと思います。
そして美雨さんが"+α”をリリース(出産)された後も、このコラボレーションが変わらずに続いていくよう、これからも美雨さんに小室さんの楽曲を歌い継いでもらえるよう、願ってやみません。
 
 
2015/5/21 小室哲哉 featuring 坂本美雨 in 八千代座
Live ♫Set List 
 
#01 TIME TO COUNTDOWN instrumental (TMN)
#02 DEPARTURES instrumental (globe)
#03 Can't Stop Fallin' in Love (globe)
#04 悲しいね (渡辺美里)
#05 MY KICK HEART (宮沢りえ)
#06 LOVE BRACE (華原朋美)
#07 永遠と名づけてデイドリーム (小室哲哉)
#08 in aquascape (坂本美雨)
#09 humansystem (TM NETWORK)
#10 SEVEN DAYS WAR (TM NETWORK)
#11 Precious Memories (globe)
en.  My Revolution (渡辺美里)
 

TECCI編集部では小室さんに熊本公演の衣装について伺いました♪
 
Q.本日の衣装は?
A.BURBERRYの春夏用スーツ。このフレアーのパンツはなかなかないね。ブーツはSaint Laurentのウエスタン。
 
Q.小室さんご自身のセレクトですか?
A.もちろん僕のセレクトだよ。
 
Q.美雨さんとの共演では衣装の打ち合わせはされますか?
A.リハーサルで当日どんな衣装を着るのかは聞くよ。
 
今回の熊本公演も小室さんのセルフ・コーディネートだったのですね。
とてもシックで素敵なスーツスタイルでした。

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