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2015年11月27日号 Vol.9 Happy Birthday♡Anniversary

Louis Vuitton と LVMHグループ(後編)

2015年11月27日 22:30 by monthly_tecci


ニコニコ生放送「小室哲哉の音源制作現場を都内スタジオより生中継」より(2015年6月14日)

この写真の小室さんが着用されているTシャツとスニーカー(Dior Homme),腕時計(HUBLOT),バッグ(Louis Vuitton)、これらのブランドすべてが巨大コングロマリット企業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)によって所有されていることはご存知でしょうか。

先月号に続くルイ・ヴィトン特集、今月はルイ・ヴィトンのグローバル企業への発展について、そしてベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)のもとヨーロッパを中心に数多くのブランドを傘下に収めラグジュアリーブランドビジネスを展開する、いわゆるルイ・ヴィトングループ、LVMHはどのように誕生したのか。小室さんも着用されているメンズラインを含めて、簡単にまとめていきます。


【ファミリー企業からグローバル企業へ】

初代ルイの時代から一貫して当主がデザイナー,職人,経営者であるファミリービジネスを貫いてきたルイ・ヴィトンが、経営の転換期を迎えたのは四代目アンリの時代、1970年代。
当時の直営店はフランスパリ本店とニースの二店舗のみで、日本でもルイ・ヴィトン製品の人気が高まりながら、代理店での品薄や輸入業者がプレミアをつけた高値で販売していたことで、海外旅行ブームに乗じた日本人が日本より遥かに安い価格で購入できるパリ本店に殺到。常に行列が絶えず、買い漁り目的の輸入業者も見られるなど、高級ブランド店らしからぬ状況に苦慮したアンリは、外部にコンサルティングを依頼します。

そして、コンサルタントの提言を受けたアンリは、ルイ・ヴィトンの所有と経営の分離を決断。自らは経営から退き会長に就任し、社長には鉄鋼会社を経営するアンリ・ラカミエ(三代目ガストン-ルイの娘婿)を招聘しました。
1978年銀座に日本初の直営店がオープンした3年後の1981年、ルイ・ヴィトン・ジャパンが設立されます。自社直営方法のビジネスモデルが確立されましたが、それらを提言し社長に就任した人物こそ、最初にコンサルティングを担当した日本人の秦郷次郎でした。

日本におけるルイ・ヴィトン製品売り上げの伸びは目覚ましいもので、2003年の調査で日本人女性の44パーセントはルイ・ヴィトン製品を所持しているとの結果がありました。これだけ日本人に支持されている理由について、秦氏は、日本は欧米と異なりファッショナブルなライフスタイルを追いかける若い女性たちが顧客として大きな層を形成していることを挙げています。この事象は中国やアジア諸外国にも言えます。
ヨーロッパでは高級ブランドと呼ばれるものは元々持つべき階級が限られており、持つべき階級ではないと「盗んできたのか」と言われかねない社会構造でした。日本にはそうした社会構造はなく、若くても欲しければ自由に持つことができる。慣習に縛られることなく、個人の価値観を自由に表現できるのは良いことであると、秦氏は述べています。
また、ルイ・ヴィトンが日本で受け入れられたもう一つの背景として、小国であり、資源が限られている日本で長い間培われてきた「いいものを長く大切に使う」という日本人の美徳感と「丈夫で長持ち、そして機能的」なルイ・ヴィトン製品の本質がうまく合致したことも言えるでしょう。


【ベルナール・アルノーの登場】

今や「ファッション界の法王」「ブランド帝国の帝王」とも称されるベルナール・アルノーは1949年フランス生まれ。大学卒業後、父親の営む建築・不動産会社に就職。若くして経営に携わり、不動産業でアメリカに進出しました。アメリカでの経営は成功を収めたとまでは言えなかったようですが、M&Aなどアメリカ的経営手法を学ぶ重要な機会となったのです。

アルノーはニューヨークのタクシー運転手が「フランスの大統領の名前は知らないが、クリスチャン・ディオールなら知っている」と答えたことに衝撃を受けたと言われています。「フランス=クリスチャン・ディオール」、一国の政治を動かす大統領よりも、歴史のある高級ファッションブランドの名前ほうがフランスの象徴として広く認知されている。ファッションブランドビジネスに大きな価値と将来性を見出したアルノーは、クリスチャン・ディオールを手中に収めるべく、買収に乗り出します。
当時クリスチャン・ディオールは、経営危機に陥りフランスの国営企業となっていた繊維会社ブサック・サンフレールの傘下でした。アルノーは投資銀行と手を組み、実家企業を担保にするなど自身すべてをつぎ込んでこの買収に臨み、1985年35歳の時に買収に成功しました。


【LVMHの誕生と展開】

一方、1987年、ルイ・ヴィトンと高級酒類メーカーのモエ・ヘネシーが折半で出資した「LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」が誕生します。LVMHを持ち株会社としてそれぞれが長い歴史を持つブランド企業が集結し、ルイ・ヴィトンの鞄,モエ・エ・シャンドンのドン・ペリニヨン,ヘネシーのコニャック等が「高級品」というキーワードで繋がり、提携を目的に合併したのです。

しかし、アンリ・ラカミエ社長(ルイ・ヴィトン社長),アラン・シュバリエ経営会議議長(モエ・ヘネシー社長)の体制でスタートしたものの、両者の経営陣の間には対立が多かったといいます。新社名でさえ、アルファベットスペルがルイ・ヴィトンが先(LVMH)、表記はモエ・ヘネシーが先(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)というように、一筋縄ではいかなかったようです。

その対立が深まる中、ラカミエはシュバリエに対抗するため、ベルナール・アルノーの支持を取り付けようとします。支持と引き換えにアルノーのクリスチャン・ディオールがLVMH株の40パーセントを取得しますが、アルノーの目的は提携ではなく買収、内部対立の機を逃さなかったのです。
1989年、アルノーはLVMH株の一斉買い付けを行い、LVMHを手中に収めます。アルノーが経営権を完全に掌握したことで、シュバリエとラカミエはそれぞれ経営会議議長と社長の座を退くことを余儀なくされ、アルノーが経営会議議長を兼任する形で社長に就任。
こうして、ラグジュアリーなライフスタイルに関連する一流ブランドの数々が集結する巨大コングロマリット企業が誕生したのです。

※現在LVMHは、大きく5つの部門でビジネス展開しています。
ワイン&スピリッツ
 モエ・エ・シャンドン,ヘネシーなど、高級洋酒ブランドで構成。
ファッション&レザーグッズ
 ルイ・ヴィトン,ジバンシイ,ロエベなど、一流ファッションブランドで構成。
パフューム&コスメティックス
 パルファン・クリスチャン・ディオール,パルファム・ジバンシイなど香水・化粧品ブランドで構成。
ウォッチ&ジュエリー
 タグ・ホイヤー,ゼニスなど高級時計、ショーメ,ブルガリなど宝飾品ブランドで構成。
セレクティブ・リテーリング
 世界最大の免税店チェーンDFS等で構成

LVMHグループの組織についてはこちら


【Louis Vuittonのメンズライン】

メンズラインはレディースライン同様に1998年からスタート。アーティスティック・ディレクターのマーク・ジェイコブス主導のもと、2011/12年秋冬コレクションまでの5年間はポール・エルバースがメンズスタイル・ディレクターを務め、プレタポルテコレクションを展開させました。
エルバースがメゾンを去った後、2012年春夏コレクションからはロンドン出身のキム・ジョーンズがメンズスタイル・ディレクターを務めています。

 

 
小室さんとキム・ジョーンズ(2015/16年秋冬コレクションにて)

小室さんが招待されフロントロウに座られた2015/16年秋冬コレクションでは、ジョーンズと同じイギリス人ファッションデザイナーで2010年に逝去したクリストファー・ネメスとのコラボレーションが話題となりました。ネメスから多大な影響を受けたというジョーンズは、ネメスの家族の協力を得て実現したという、ネメスのアイコンパターンであるロープ・モチーフから着想を得た作品を多数発表し、敬愛するネメスにオマージュを捧げたのです。



ネメスは1986年に自らの拠点をロンドンから東京に移し、その生涯を終えるまでを日本で過ごしました。世界で唯一の旗艦店が東京・原宿にあることからも、ネメスと日本の絆、いかに日本を愛したデザイナーであったかを感じ取ることができます。
ジョーンズもネメス同様に親日家として知られ、2015年8月、ルイ・ヴィトンが伊勢丹新宿店メンズ館にポップアップストアを期間限定でオープンした際も来日を果たし(ストアデザインをジョーンズ自らが監修)、自身の大きな「ネメス愛」を多くのメディアインタビューで語りました。ネメスの死後も家族と交流を続けており、ネメスに捧げるコレクションを実現させるのは念願であったといいます。

小室さんもこのネメス・コレクションからいくつかアイテムを着用されています。
雑誌「Rolling Stone(ローリング・ストーン)日本版」2015年9月号に掲載された、センターにロープ・モチーフが大きく施された赤色のスウェットシャツは、特に印象的でした。
また、2015年7月「TOKYO LOUNGE」で着用されたブラックのデニム素材のジャケットに施されたロープ・モチーフは、日本の和紙を表現しているそうです。

伝統を損なうことなく革新を繰り返しつつ、今なお繁栄し続けるブランド、ルイ・ヴィトン。そのブランドの魅力はデザインはもちろん、品質の高さや企業理念・精神、そしてその概念を長きに渡り保ち続けていることなど多岐に渡っていると言えます。なによりも顧客を大切にする姿勢・サービス力が、揺るぎないブランドの王様として世界中で愛され続けている理由だとあらためて感じました。

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数多くのルイ・ヴィトンを着用されてきた小室さんですが、今年は1月のパリコレクション参加(衣装部大歓喜!フロントロウ!)にはじまり、特にテレビ出演では立て続けに目にする機会が多かったですね。

が、しかし、今年夏くらいから目立って多くなったのは、サンローランやアレキサンダー・マックイーン!(これにも衣装部大歓喜!なのです)・・・おや?!ルイ・ヴィトングループが一段落で、次はいわゆるグッチ・グループ(※)にシフトなのか?!(笑)

ということで、来月号は「サンローラン特集」を予定しています。
上海,ベトナムでとてもお似合いだった小室さんコーディネートが記憶に新しい中、12月には映画「SAINT LAURENT/サンローラン」も全国ロードショーされるという、絶妙なタイミングでの特集です。どうぞお楽しみに!



(※)KERING(ケリング)・・・フランスの大手コングロマリット企業。LVMHに次ぐ世界三大ラグジュアリーブランドグループのひとつ。ラグジュアリー部門,スポーツ&ライフスタイル部門でビジネス展開し、グッチ,サンローラン,アレキサンダー・マックイーン,バレンシアガ,プーマなどのブランドを傘下に所有している。


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